Research Press Release
Nature Communications
2020年2月19日
Ecology: 50,000 years of bird migration modelled
過去5万年に及ぶ世界の鳥類の渡りパターンを再現する全球モデルが作成され、世界中の鳥の渡りは、最終氷期においても今と同じくらい重要だった可能性が非常に高いことが分かった。この新知見は、鳥の渡りが、これまで考えられていたよりも古くから起こっていたことを示唆している。この研究について報告する論文が、Nature Communicationsに掲載される。
多くの鳥類種は、気候の季節変動に応答して渡りをする。渡り行動は、柔軟に変化し、例えば、現在進行中の気候変動に対処するために渡りの経路を変えてしまった鳥類種もいる。これに対して、氷期は、季節性がそれほどはっきりしないため、鳥類の渡りの重要性が現代と比べてはるかに低かったとする学説が提起されていた。
今回、Marius Somveilleたちの研究チームは、鳥類の渡りが過去5万年間続いていた可能性の高いことを明らかにした。今回の研究で用いられたのは、エネルギー効率(資源の利用可能性と移動のエネルギーコストとの関係)に基づいて全世界の鳥類の季節的地理分布をシミュレートするモデルで、その妥当性の検証が、海洋鳥類以外の現生鳥類のほぼ全て(9783種)の既知の分布を用いて行われた。そのうえで、このモデルを過去の気候の再構築に適用してシミュレーションを行ったところ、最終氷期最盛期(約2万年前)と現在の間氷期の間に大きな気候変化があったにもかかわらず、全世界で鳥類の渡りが重要な役割を果たし続けたことが明らかになった。一方、注目すべき地域差も判明しており、例えば、北米・中南米では、最終氷期最盛期に渡りを行った鳥類種の数が、現在よりも少なかった。
今回のシミュレーションは、鳥類の渡りが今後の気候変動にどのように応答するのかを予測する際に1つの基準となる、とSomveilleたちは結論付けている。
doi:10.1038/s41467-020-14589-2
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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