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Thursday, August 27, 2020

銀河に橋をかけるあの鳥の正体とは?田園の守り神・鷺のミステリー《後編》(tenki.jpサプリ 2020年08月27日) - 日本気象協会 tenki.jp - tenki.jp

言わずと知れた日本児童文学史上の不朽の名作にして、宮沢賢治の最高傑作ともいわれるファンタジー『銀河鉄道の夜』。そのある箇所に、不可解な描写があり、以前から議論となっています。

「まあ、あのからす。」カムパネルラのとなりの、かおると呼ばれた女の子が叫びました。
「からすではない、みんなかささぎだ。」カムパネルラがまた何げなくしかるように叫びましたので、ジョバンニはまた思わず笑い、女の子はきまり悪そうにしました。まったく河原の青じろいあかりの上に、黒い鳥がたくさんたくさんいっぱいに列になってとまってじっと川の微光を受けているのでした。
「かささぎですねえ、頭の後ろのところに毛がぴんと延びていますから。」青年はとりなすように言いました。(『銀河鉄道の夜』九、ジョバンニの切符)

「かささぎ」と言えば、牽牛と織姫の逢瀬のために銀河に連なり橋をかける鳥、と伝わり、大伴家持の「鵲(かささぎ)の渡せる橋に置く霜の白きを見れば夜ぞ更けにける」の百人一首でも有名な、あのカササギ(学名はpica pica)です。
ではなぜこのシーンが議論になってきたかと言うと、カササギには「頭の後ろにぴんと延びた毛」=冠毛はないからです。

カササギは広くユーラシア大陸・北アメリカ大陸の温帯に分布し、特に東アジアでは普通に見られる個体数の多い鳥ですが、日本には、古くは『魏志倭人伝』に「牛・馬・虎・豹・羊・鵲無し」と書かれているとおり、例外的に分布していませんでした。
佐賀県の佐賀平野を中心に、長崎県東北部と福岡県南部のごく一部に密集的に生息することはよく知られていますが、これは安土桃山時代に朝鮮出兵の武将たちが持ち帰り放鳥したものと考えられています。
1980年前後から、日本各地で生息が報告されはじめているのですが、これはどうも人間の貿易が盛んとなり、貨物船などに混じって大陸から渡ってくる個体が多くなってきたことによるようです。ですからカササギは基本的には外来種の大陸系の珍しい鳥で、日本人の多くがカササギの実物など見たことはなかったのです。賢治もまたカササギについては名前だけは知っていてもどんな鳥かよくわかっておらず、何か別の鳥と取り違えているのではないか。だとしたら取り違えた鳥の種類は何か。それが論じられてきたのです。

シギの仲間で、体色はメタリックグリーンと白、頭にぴんと目立つ冠毛のあるタゲリ(田鳧 vanellus vanellus)ではないか、という説が有力視されているのですが、タゲリでは、女の子がカラスと勘違いした前段の描写と食い違います。どんなに鳥に疎くても、大きさはハトほどで頭もクチバシも小さなタゲリを見てカラスと見間違う人はいません。
実を言うと筆者は宮沢賢治は鉱物や植物などと比べて、鳥については知識が乏しかったのではないか、と推測しています。有名な童話「やまなし」では、こんな箇所があります。

「おとうさん、いまおかしなものが来たよ。」
「どんなもんだ。」
「青くてね、光るんだよ。はじがこんなに黒くとがってるの。そいつが来たらお魚が上へのぼって行ったよ。」
「そいつの目は赤かったかい。」
「わからない。」
「ふうん。しかし、そいつは鳥だよ、かわせみと言うんだ。」(「やまなし」)

ここで賢治は、カワセミの特徴を目(虹彩)が赤いとしています。『春と修羅 第二集』所収の詩「花鳥図譜 七月」にも、「ははああいつはかはせみだ、翡翠(かはせみ)さ、目だまの赤い」というくだりがあります。しかし、カワセミの目は実際には赤くありません。黒飴のように真っ黒です。この詩の草稿では、「きっと小さな五位さぎだ」という一節があります。ゴイサギの虹彩は鮮やかな赤です。とするともしかしたら、賢治はゴイサギをカワセミと思っていたのかもしれません。少なくとも賢治がゴイサギとカワセミの区別も曖昧であることを疑わせます。

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August 27, 2020 at 06:39PM
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