【ロンドン=板東和正】欧州連合(EU)離脱の命運を決める英総選挙で、ジョンソン首相の与党・保守党が単独過半数の議席を得たことで、同党が公約に掲げる来年1月末の離脱実現が確実になった。今後は、EUや米国などとの自由貿易協定(FTA)交渉を円滑に進められるかが課題となる。
ジョンソン政権は総選挙での勝利を受け、来年1月末の離脱期限を目指し、EUと合意した離脱協定案の関連法案審議を下院で今月17日にも再開する。
関連法案の成立後、協定案の採決も行われる見通しだ。保守党が協定案の下院可決に必要な過半数の議席を確保し、離脱に向けた議会手続きの「障害はほぼ何もない」(保守党関係者)という。
離脱をめぐる今後の焦点は、貿易交渉に移る。ジョンソン氏の協定案では、現状の経済関係を2020年末まで継続する「移行期間」が終わった時点で、英国全体がEU関税同盟から離脱する方針だ。
保守党は移行期間中に、EUのほか、日米などとFTAの締結を目指す。ただ、その目標を達成するのは至難の業に近い。
まず、英国は最大の貿易相手であるEUとのFTA交渉で難題を抱える。英側は関税撤廃や、金融をはじめとするサービス業の市場開放を求める方針だが、サービス業で両者が競合する可能性があり、EU側が難色を示すとみられている。
EUが過去に締結したFTAは、交渉開始から発効まで平均で約6年かかっており、20年末までに交渉をまとめるのは容易ではない。
米国とのFTA交渉では、農業や医療分野で低価格の米国産品が押し寄せ、英企業を圧迫するとの懸念があり、交渉が長引く恐れがある。
一方、日本に対しては、ジョンソン氏が安倍晋三首相と今年8月に電話会談し、貿易協定の締結を目指すことで一致したものの、EUや米国とのFTA交渉に時間を割かれ、「日本が後回しになる」との指摘も出ている。
2019-12-13 12:08:00Z
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