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Tuesday, December 1, 2020

クロップはリバプールの危機をチャンスに変える。2人の19歳はいかにしてアヤックス戦勝利の立役者となったのか?【CL分析コラム】 - フットボールチャンネル

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壊滅的状況のリバプール

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【写真:Getty Images】

 リバプールは壊滅的な状況である。フィルジル・ファン・ダイクとジョー・ゴメスはともに膝を負傷し、今季中に復帰できるかどうか怪しい。トレント・アレクサンダー=アーノルドは代表活動中に負傷。ジェームズ・ミルナーとアリソンは週末のブライトン戦で負傷してしまった。

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 中盤に目を移すとアレックス・オックスレイド=チェンバレン、ナビ・ケイタ、チアゴ・アルカンタラ、ジェルダン・シャキリといったMFのバックアッパーがいない。UEFAチャンピオンズリーグ(CL)では23人を登録できるが、この試合では20人しかベンチに入れることができなかった。

 言わずもがなリバプールの最大の武器はトランジションである。3人のMFを筆頭にボール奪取に優れた選手が並び、スピードのある前線の選手を活かして相手のゴールを襲う。カウンターとプレッシングのサイクルが基本である。

 ボール保持率は高いが、ショートパスで崩そうとすることは少ない。最終ラインでパスをつないで相手をおびき出し、サディオ・マネや高い位置を取るサイドバックに展開して一気に攻め込むのが狙いであることが多い。

 前掛かりになって攻める分、それをひっくり返されることは1試合の中で何度かある。カウンターを受けた際はジョー・ゴメスとファン・ダイクがスプリントして広大なスペースをカバーしていたが、その戦略も両センターバックの長期離脱によって見直しの必要性を迫られている。

長所を活かすための変化

 この試合のボール保持率は50%を切り、パス本数は今季初めて400本を下回った。

 アレクサンダー=アーノルドとファン・ダイクがいないので、アンドリュー・ロバートソンに高精度のサイドチェンジが収まることはない。ファン・ダイクとジョー・ゴメスがいないのでカウンターでDFラインの裏を突かれるリスクは大きくなる。となれば、無理にボールを保持する必要もなくなる。相手にボールを持たせた状態から中盤のボール奪取能力と前線のスピードを活かしたカウンターを狙った方が効率が良かった。

 この試合では3トップの中央にロベルト・フィルミーノではなくディオゴ・ジョッタを起用。カウンターを狙うという意味ではジョッタの方が威力は増す。リバプールは急所を隠しながら長所を活かす戦い方を導きだした。

 両チームともに決定機を迎えながら、なかなかゴールネットを揺らせない時間が続いていた。リバプールはカーティス・ジョーンズ、アヤックスはダビド・ネレスのシュートがともにポストに当たった。両チームともGKの活躍が光り、カウンターを浴びた際はセンターバックがイエローカード覚悟のディフェンスで防いでいた。

立役者となった4人のユース出身者

 試合は0-0のまま推移したが、19歳の2人が試合を決めた。ネコ・ウィリアムズが上げたクロスを、カーティス・ジョーンズがファーサイドで合わせる。ユース出身の2人が停滞ムードを払しょくした。

 ネコ・ウィリアムズは右足で蹴るフェイントをかけて、左足に持ち替えた。アレクサンダー=アーノルドと比べてしまうのはあまりにも気の毒だが、サイドバックとして見ればキックの質は高い。GKが飛び出しても触れない絶妙なコースだった。ジョーンズは試合の序盤に2つの決定機を逸したが、得点シーンは見事な飛び込みだった。DFの死角からボールのコースに入ってうまくボールに触っている。

 得点を決めたのがユース出身の2人なら、虎の子の1点を守り抜いたのも下部組織出身の選手である。

 アヤックスに何度か攻め込まれるシーンはあったが、GKがチームを救った。クィービーン・ケレハーはこの試合が記念すべき欧州デビュー戦。トップチームでの経験は国内カップ戦の4試合しかないが、それを感じさせない落ち着いたセービングでチームのピンチを凌いだ。ユルゲン・クロップは試合終了のホイッスルを聞くと、真っ先に自身より小柄な22歳の青年の労をねぎらった。

クロップが蒔いた種

 1点を追うアヤックスはクラース・ヤン・フンテラールを入れてFWの枚数を増やし、その2分後にフンテラールは決定機を迎えた。するとリバプールは後半アディショナルタイムにリース・ウィリアムズを投入して5バックの壁を築く。サイド攻撃を繰り返すアヤックスに対して、リバプールは195cmのマティプとリース・ウィリアムズで対抗した。

 欧州の覇権奪回に向けて、リバプールは1試合を残してグループステージ首位通過を決めた。最終節で主力を休ませることができるのは、週2ペースで試合が続くリバプールにとっては何にも替え難いグッドニュースである。

 思い返せば、昨季のプレミアリーグはリバプールの独走状態で、7試合を残してリーグ優勝を決めた。リバプールは公式戦中断までにカップ戦もすべて敗退していたため、ジョーンズやネコ・ウィリアムズには積極的に出場機会が与えられていた。そこで蒔いた種がこうして実を結んだと言えるだろう。

 クロップは種を蒔くタイミングが非常にうまい。プレッシャーのかかる場面でいきなり起用することはなく、カップ戦や途中出場で経験を積ませる。アレクサンダー=アーノルドは16/17シーズンにカップ戦中心に経験を積み、翌シーズンに公式戦33試合に出場してブレイクした。

 このシーズンはそれまでレギュラーだったナサニエル・クラインが負傷でシーズンの大半を棒に振っていた。若手の台頭は主力の怪我がきっかけとなるケースは多く、今まさにその場面を迎えているのかもしれない。

 ピンチはチャンスという言葉があるが、クロップはまさに危機的状況を若手の成長というチャンスに変えている。もちろん厳しい状況は今後も続くが、もしそれを乗り越えることができれば、2年ぶりのCL制覇が見えてくるかもしれない。

(文:加藤健一)

【了】

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