オリックスが27日、25年ぶり13度目(阪急時代の10度を含む)のリーグ優勝を果たした。2004年オフの近鉄との合併後は初めて。2位・ロッテが楽天に敗れ、優勝マジックが一度も点灯せずに決定。ヤクルトと全く同じで2年連続最下位からの栄冠だった。前年の最下位チームが両リーグでそろって優勝したのは史上初。全日程終了(25日)後の優勝は1988年の西武以来、3球団目。代行監督から就任1年目の中嶋聡監督(52)は待機していた京セラDで3度、胴上げされた。11月10日初戦のCS最終ステージから96年以来の日本一を目指す。
12球団で最も遠ざかる25年ぶりの悲願が成就した。本拠地・京セラDに集合し、楽天―ロッテ戦(楽天生命)をテレビ等で見守ったオリックス・ナイン。午後8時56分、ロッテの敗戦が場内スクリーンに映し出されると、ベンチからユニホームに着替えた全員が飛び出した。
中嶋監督自身が正捕手として活躍し、イチローらを擁した96年以来のリーグ制覇。マウンドにできた歓喜の輪に、指揮官が瞳を潤ませながらゆっくりと加わると、3度宙を舞った。「本当にうれしい。25年間、優勝できないことをクローズアップして言われてきて、何とかしたかった。皆が新たに歴史をつくってくれた。(ファンには)本当にお待たせしました、おめでとうございますと言いたい」と安どの笑みをこぼした。
2年連続最下位で、しかも過去20年でAクラスが2度だけ。優勝は遠い目標に思われたが、あえて「育成」と「勝利」の両立を掲げた。「ただ若いやつを使う、という問題じゃない。チーム自体の育成。どう熟成していくか。負け癖じゃなく、勝ち癖をつける」。経験不足によるミスが原因で敗れても「こちらの責任」と背負った。試合後の囲み取材でも選手批判は一切なし。結果を恐れさせず、プレーに集中させた。
転機は11年ぶりの交流戦V(12勝5敗1分け)だった。交流戦終盤からリーグ戦再開後も続いた11連勝中に首位に立ち、自信が芽生えた。勝つことで結束を深め、逆境でも下を向かない不屈の軍団に生まれ変わった。昨季10勝24敗の1点差試合は今季20勝13敗の勝負強さを発揮した。
MVPは一人で貯金13を稼いだ「投手5冠」の山本だが、ワンマンチームではなかった。大きな力になったのが、2軍監督時代から知り尽くす“中嶋チルドレン”。主に4番を託した杉本は、象徴的な存在だ。「今までは結果が出ないと2軍に落ちる恐怖があった。心の余裕が一番大きい」と30歳の大砲。過去5年の大半を2軍で過ごしていたが、32本塁打と花開いた。高卒7年目で三塁に定着した宗も初めて1軍に定着して規定打席に到達。才能をくすぶらせていた中堅選手たちが続々と覚醒した。マジックの秘密は辛抱強さと兄貴分的なフレンドリーさだ。
選手との関係性を示す象徴的シーンがある。シーズン大詰めで吉田正が離脱する最大の危機を迎えた。左太もも裏痛から約3週間ぶりに待望の復帰を果たしてから、わずか6試合での悲劇。右尺骨骨折で今月3日に登録を抹消された。「正直、心が折れかけた」と中嶋監督。選手と一緒に入り、世間話に興じる京セラDのサウナ。いつもは明るい場で黙りこくり、空気は重かった。「切り替えていきましょう!」。ジョーク交じりに声をかけたのが杉本。「いろいろ考えてんだよ!」と笑って返し、和んだ。
ノビノビとした雰囲気の中、若手も躍進した。高卒2年目の宮城が13勝とブレイク。同学年の紅林も「開幕・遊撃」から136試合に出場し、2ケタ本塁打。攻守で歯を食いしばった。
上田利治、仰木彬、東尾修、トレイ・ヒルマン、梨田昌孝、栗山英樹…。選手時代に師事した9人の指揮官に「誰というより良いところを全部ひっくるめて取ってやろうかというところ」。敬意とともに明かしていた意欲を結果で示した。
今季は143試合で130通りに及ぶオーダーを採用。猫の目打線を得意とした仰木監督譲りの“マジック”だ。一方、3日連続登板の投手はゼロと上田監督、梨田監督と同じ捕手出身らしく、リリーフ投手の体調維持に細心の注意を払った。球団は来季続投方針で長期政権も視野に入れる。「名将」の系譜を確かに紡いだ。(宮崎 尚行)
◆中嶋 聡(なかじま・さとし)1969年3月27日、秋田県生まれ。52歳。鷹巣農林(現秋田北鷹)高から86年のドラフト3位で阪急(現オリックス)入団。西武、横浜(現DeNA)を経て2004年から日本ハム。07年からバッテリーコーチを兼任し、15年に現役引退。実働29年はプロ野球タイ。19年からオリックス2軍監督。20年途中から1軍監督代行、今季から1軍監督。通算1550試合、804安打、55本塁打、349打点、打率2割3分2厘、182センチ、82キロ。右投右打。
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