【著者に聞け】松原始氏/『カラスは飼えるか』/新潮社/1400円+税
そういえば飲食店が軒並み休業に追い込まれる今、都会のカラスは一体どこでどうしているのだろう?
「たぶん大変だと思います。私も非常に見たいのですが、朝方にうろつくと職質されますし、そもそも“不要不急”案件ですよね(苦笑)」(松原氏、以下同)
2012年の話題作『カラスの教科書』以来、〈カラス先生〉としてお馴染の鳥類学者・松原始氏。最新刊『カラスは飼えるか』の書名は、ウェブでの連載中に最も反響が大きかったテーマに由来するものの、〈飼えない。以上。〉と早々に宣言。その上で、より深遠な鳥&カラス愛の世界に読者を誘う、鳥と人を巡る何ともお茶目なエッセイ集なのだ。
松原氏は大真面目に書く。〈物理的に可能かどうかだけでなく、法的に、倫理的に、その動物を手元に置くことは許されるか〉〈動物と人間の関わり方をも、「飼う」というワードは問いかける〉と。
「実は日本ほど都会に普通にカラスがいる国も珍しく、身近な分、イメージが一人歩きしていると感じます。黒くて不吉な鳥だと勝手に毛嫌いされたり、かと思えば可愛がられたり。当のカラスは何も変わらないのに不思議ですよね」
野生動物ならなおのこと、慎重さが求められる「飼う」という行為。だが、実際は人間の都合ばかりが優先される中、注目は著者のスタンスだ。
〈野生動物とは彼らの流儀で生きている、独立国家のような存在だ〉〈他種の動物相手に「わかり合える」という発想がそもそも、緊密で大きな社会を持った、しかも全てを擬人化して物語を付与しがちなヒトという生物の思い込みにすぎない〉〈実際、どんなに動物が好きだろうが、それはこちらの事情にすぎない〉〈必要なのは「わかり合う」ではなく、まずはお互いの身体感覚で相手との間合いを把握する、つまり「渡り合う」ことであった〉
「例えば、紫外線も見えているカラスの色覚では、ヒトと見ている世界が違うはずです。その違いを素通りするかワクワクするかは、人それぞれですよね。ただ、物事は自分の物差しだけで測りすぎない方がいいですし、人知を超えた存在をありのままに面白がる方が、はるかに楽しく豊かな生き方だと思うのです。
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