ぼくと雪崩ははっと顔を見合わせた。ついで、上野公園の高台から目を凝らした。西の方角にある本郷はよく見えなかったが、南東の下町、本所深川のほうは、黒煙でいぶされ、朝日の色まで、この世の終わりのようだった。
ぼくたちの表情を見て、緑郎少年が、すっと顔色を変えた。
家に帰ると言い張り、止めても聞かず、小さな弟の手を引いてどんどん歩きだしてしまった。雪崩が「あ、ちょっと！ あんな子供だけで行かせられるかい。要造さん！」と、ぼくの手を引いてついていく。恐ろしい姿を見せる、燃え残りの町を四人で歩きながら、ぼくらは緑郎少年の話を聞いた。
「あのとき、ぼく、家に帰ってき…
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