剥製か、彫刻か。ぱっと見ただけで区別するのは極めて難しい。想像以上にリアルで精巧な仕上がり。手を伸ばすと、羽を広げて今にも飛び立ちそうだ。

焼きごてを使い、羽の段差を再現する岩橋さん=松浦弘昌撮影
木片から鳥を彫り出して彩色する工芸品「バードカービング」は、米国の先住民がカモ猟のおとりとして使った鳥の木型(デコイ)が起源とされる。日本には1970年代に紹介され、97年に日本バードカービング協会が発足した。兵庫県三田市に工房を構える岩橋徹さん(67)は、全国大会で最優秀を8度も受賞した実力の持ち主。鳥たちの一瞬の動きを見事に切り取る高い技術と表現力は、海外でも高く評価されている。
躍動感を生み出す作品づくりは、徹底的なデータ収集から始まる。制作する際には必ず博物館を訪ねて標本を見せてもらい、形状や色彩を細かく観察。くちばしや羽の長さ、幅、厚みから目と目の間の距離まで約70カ所を0.1ミリ単位で計測し、制作に生かす。岩橋さんは「バードカービングは鳥類という自然の芸術を再現すること。基本となる『正確さ』をおろそかにすると、美しさを追求しても魅力あふれる作品にはならない」と力を込める。
データは粘土の立体図に反映。それを木材に写し書きするなどした後、削り始めるが、羽の中央の「羽軸」から無数に細かく伸びる「羽枝(うし)」や、羽の段差を本物そっくりに再現できるかどうかで完成度は変わる。ナイフ状の焼きごてで1ミリの間に2~3本の筋を入れたり、羽に段差を付けたりする作業は根気のいる孤独な闘い。「どんなに頑張っても程々の正確性にしかならないと毎回痛感する」と謙遜するが、絶妙な角度で工具を当てる動作は滑らかで無駄がない。
ガラスの目を入れ、約60種類のアクリル絵の具を使い分けながら色づけする工程なども含めて全て手作業だ。鳥の形状や大きさなどにもよるが、木彫りを楽しむレベルを超えている岩橋さんの場合、1年に1、2体をつくるのが限界。販売目的で制作しているわけではないが、これまでに完成させた54作品の中には、100万円台の値がついて個人のコレクターに譲ったケースも複数あるという。
日本バードカービング協会の関係者によると、国内の愛好者は5万人ほど。認知度アップは課題だが、近年は時間に余裕のある高齢者を中心に趣味として基礎を学ぶ人も増えており、岩橋さんも工房で3人を指導する。自然保護強化の流れを背景に、博物館などで剥製の代わりにバードカービングを展示する動きもあり、プロの作家らが作品を提供しているという。
「精巧さだけでなく、鳥の生命力やエネルギーをどこまで吹き込めるか」。バードカービングの難しさをこう表現する岩橋さん。2019年10月に仕上げた最新作は、水面を走る水鳥(鳥名・バン)をオオタカが背後から狙う場面を切り取った。生と死の緊張感が交錯する自信作で目指すのは、発祥の地・米国で20年4月に開かれる世界大会での優勝だ。
(江口博文)
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January 06, 2020 at 12:01AM
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米発祥のバードカービング、鳥の一瞬刻む 兵庫の達人 - 日本経済新聞
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