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Friday, January 31, 2020

(小説 火の鳥 大地編)39 桜庭一樹 「きたか、鳳凰機関よ」 - 朝日新聞

 ぼくは、四回目の世界の大滝雪之丞が元気に暮らしていることに、(そうか……)と不思議な安堵(あんど)を感じた。仲間から離れて座り、しばし物思いにふけった。

 しかし、と帰り道。ぼくは人力車に揺られながらはっとした。ということは、“火の鳥”の首はいまこのときも楼蘭にあり、王女マリアなる人物が守り続けているというわけか。ふぅむ……。ぼくの脳裏に、三回目の大滝雪之丞が目の前で回してみせた地球儀が蘇(よみがえ)った。世界がまたぐるぐる回り始める……。

 そんな思案の中、三田村家に帰宅した。虹口(ホンキュウ)の一等地に建てたばかりの家。外観は純日本家屋風で、内装は和洋折衷だ。妻がいないなと思っていると、召使が気づいて、妻は鬼瓦のところの芸者三人衆と麻雀(マージャン)しに出かけたと教えてくれた。連れがいるとはいえ、夜は物騒なので心配していると、表で車の停(と)まる音がし、ついで玄関の扉が開き、妻が現れた。海軍の軍服姿の男性二人の肩を借り、痛そうに足を引きずっている。「どうしたのさ、お夕ちゃん」と駆け寄ると、申しわけなさそうに「転んだの」と言う。若いほうの軍人が「人力車に乗ろうとされたところ、何者かに突き飛ばされ、道路に転がり」「えっ」「そこに馬車がやってきて蹄(ひづめ)で潰されそうになるところ」「え、えーっ」「我々が担ぎあげて舗道に救出し」「な、な、なんて……」とぼくは貧血を起こし、「……こと」とつぶやいて床に座りこんだ。妻が「やだ、あんた」と袖で冷汗(ひやあせ)を拭いてくれる。

 一家の主(あるじ)としてお礼…

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